長濱領(朱印地)境

 彦根領内長浜町の朱印地(年貢免税地)境に建てられた朱印地境石になります。必要なことはすべて現地説明板に書かれていますので、説明文・江戸時代絵図・現代地図と3分割しましたが、現地説明板を掲載します。

 3枚目の現代地図を見る限り、現存の石も近接移設されており、純粋な意味で原位置にあるのは、1基程度に思えます。

 





 長浜町52町のうち、35町が朱印地・2町が入組(朱印地と朱印地外が入り組んだ町)・15町が朱印地外とのことですので、滋賀県立図書館が公開する長浜町之絵図(万延元<1860>年/2枚目に掲げた現地説明版の絵図とよく似ていますが、若干違う)から町名を拾い、角川日本地名大辞典で検証しました。(長浜町之絵図を北から筋ごとに西→東へ追っています。)
                                                                                                     
朱印地35町
入組2町
朱印地外15町
中鞴(なかたたら)町
下船(しもふな)町 
北出町
北片原町
西御堂前町
郡上町
東御堂前町
郡上片原町
北浦町
知善院町
拾軒町(角川日本地名大辞典では十軒町)
袋町
宮町
三ツ屋町               三ツ屋村
片町
西北 (にしきた)町
金屋町
中北町
金屋新町
東北町
上田町
中片原町
中田町
下呉服町
下田町
鍛冶屋町
稲荷町
北伊部町
十一町
西魚屋町
小舟町
中魚屋町
東魚屋町
南伊部町
南片原町
中呉服町
大谷市場町
大手町
神戸(ごうど)町
上呉服町
横町
西本(にしほん)町
東本町
上船(かみふな)町
瀬田町
箕浦町
横濱町
八幡(やわた)町
大安寺町
紺屋町
南新町
舟片原町
(鉄炮町)

 長浜町之絵図(万延元<1860>年)では、鉄炮町は独立した町のように描かれていますが、現地に掲げられた説明版の絵図では「八幡町の内」となっているようです。(画像ごしでは文字が粗くて言い切れません。)

 角川日本地名大辞典にも鉄炮町の記載はなく、鉄炮町を数えずに52ヶ町あります。上の表では鉄炮町を除いて朱印地が36ヶ町あり、入組が1町しかありません。三ツ屋町は朱印地に含まれ、三ツ屋村は朱印地外となっていますので、両者を合わせて三ツ屋が入組ではないかと考えていますが、言い切るだけの根拠を見つけられていません。

 朱印地外の15町と入組2町の朱印地外の部分も長浜町内ですが、この境石は朱印地内を長浜領と表記しています。

是より北西(北国街道)
文 字
  是 北 西 長  領
 
場 所
長浜市朝日町 北国街道上 松岡製靴店前。長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、下船町に該当しそうです。
備 考
現地説明版(3枚目に掲げた現代地図に落とし込んだもの)を見る限り、原位置とはいえないような気がします。(朱印地外にマークされている。)
サイズ
高さ 82×横 18.5×奥行 18(cm)                                 2023/02/01

是より西
文 字
  是 西 長 (と思われる文字の上部)
 
場 所
長浜市朝日町 月宮殿曳山蔵前。長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、八幡町之内とされる場所に該当しそうです。
備 考
クリークの護岸石に組み込まれて、ちょうど橋の真下になります。上記地図を見る限り、「これより西」の方角もあっており、正確な意味で原位置に建ち続ける石かもしれません。

万延元(1860)年では橋は架かっていませんが、なんらかの工作物のようなものは見えます。(仮橋?)
サイズ
高さ ×横 ×奥行 (cm) 未計測                                  2023/02/01

是より南
文 字
  是 南 長  領
 
場 所
 長浜市元浜町 三ツ大神宮境内。長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、三ツ町に該当しそうです。
備 考
 「長」の部分で折れ、「長」の文字の一部はセメントによる補修。
サイズ
高さ 95×横 18×奥行 18(cm) 現在の全高は95cmですが、本来地中に入るべき粗削り加工部が露出しており、境石としての高さは85.5cmで採りました。(ただし、一部は<たぶん推測による>補修ですから、正確な全長とはいえません。)                                                  2023/03/01

是より東
文 字
  是 東 長  領 
 
場 所
現在は長浜市南呉服町の西本願寺 長浜別院内の庭に。長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、中鞴(この場所では「中たたら」と表記)町に該当しそうです。
備 考
長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、該当の場所(一番北の中たたら町)の朱印地境西縁に道が付いていますので、この道際が原位置になるのでしょう。現在は西本願寺 長浜別院内にありますので、数mの近接移設でしょうか。
サイズ
高さ 85×横 ×17奥行 18(cm)                                  2023/03/01

現 長浜城歴史博物館
文 字
  是 南 長  領 
  是 東 長  領
 
場 所
現在は長浜市公園町の長浜城歴史博物館の前庭に。現地の説明板には「もとは長浜町の西北隅に建っていたと思われる」とされています。三ツ矢大神宮境内の「これより南」石の少し西が朱印地(三ツ屋町)の北西角になり、現在は浜町31−26先に「從是南西長濱領」のレプリカ境石が建っています。たぶんこの位置が原位置になるのでしょうが、レプリカ石の方角が「南西」となっているのが気になります。(西は朱印地外。)

長浜町之絵図(万延元<1860>年)で見ると、三ツ屋町の北出町との境でしょうか。
備 考
私が目にした唯一の二面彫りとなっています。(レプリカ石は、一面彫りと同一方角三面彫りが混在しており、その基準が私にはわかりませんでした。)

たとえば、朝日町の北国街道上の石は、一面に「これより北西」と彫られています。この石を「これより北」と「これより西」の二面彫りにすることも、この現長浜城歴史博物館前庭の石を、「これより南東」と一面彫りにすることもできたでしょう。

オリジナル石とされるものに一面彫りと二面彫りがあることについて、なんらかの史料に基づくものなのかは、今後の課題ということで。
サイズ
高さ 100×横 20×奥行 20(cm)                              2023/04/01

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